「先輩みたいに上手に採血できるナースになりたい」
「血管難の患者さんでも、一発でスッと採血できるようになりたい」
そんなあなたは、「採血の基本」を学んでみましょう。
採血で失敗したとき、
先輩にアドバイスを求めると…
「もっと角度を浅く刺したほうがよかったよ」など、
たまたま目についた欠点に対するアドバイスがもらえる場合がありますが、ケース・バイ・ケースと言われることもあります。
また、多くの新人は「バンバン経験を積むしかない!」「場数を踏むしかない!!」と言われるのです。
このように、
わかったような、わからないようなフワッとした感覚で次の採血の機会を待つことになります。
とはいえ、
大半の人は、これを繰り返し行い、安定して採血やルート確保がとれるようになるのは事実です。
しかし、採血の名人と言われる看護師ほど、「基本」を疎かしていません。
つまり、
採血の名人は本能的にできてしまう人と思われがちですが、
感覚的や勘を頼りに実施することはないってワケです。
そこでこの記事では、
採血で押さえるべき「基本ポイント」をまとめました。
新人ナースはもちろんのこと、ブランクある看護師さん、採血が苦手で克服したい看護師さんは最後まで読めば、成功率が劇的にアップするでしょう。
採血の準備
採血の名人になるには、準備からすでに始まっています。
穿刺するときの「気持ち」のもち方
採血成功にはメンタル面も大きく影響するため、「うまくできる!」「絶対に大丈夫」など自信を持つことが大事です。
しかし、いきなり自信を持つことのほうが難しく、新人ナースは無理に「絶対にできる」と暗示をかけなくてもいいでしょう。
というのも、
「ダメかもしれない…」「失敗しそう…」と疑心暗鬼になっているときは、頭のイメージと体の動きが微妙にズレが生じてしまうからです。
暗示をかけてもいいのですが、真の意味で自信が持てているワケではありません。
まずあなたが目指すべきは、「基本」を習得することです。
正しい手技を知り、意識しながら試行錯誤を繰り返し、多くの経験を積むことで自信が持てるようになります。
「この血管ならいけそう!」「こっちの血管ならできる」と思える状況が増えてきたら、着実に成長している証です。
自信をもつことも大事ですが、
「本当の自信は後からついてくるもの」という気持ちで穿刺に臨みましょう!
必要物品は「多め」「余分に」準備しよう
初心者のあいだは、必要物品は多め、余分に準備しましょう。
言わなくてもわかっているとおり、
1発で入らずに失敗する可能性もあるからです。
多め、余分に準備しておけば、
いちいちステーションにまで取りに行かなくても済みますよね。
取りに行った際に、先輩から「〇〇やって」と別の仕事を依頼されたり、ナースコールの対応しなくてはならない状況が避けられるはず。
時間ロスだけでなく、採血に集中できる環境を整えることも欠かせません。
とはいえ、
必要物品を多め、余分に準備するとワゴンやトレーの上がごちゃごちゃになりがち。
物品の配置も工夫することで、手際よく作業が進められ、患者さんは安心できるし、針刺し予防にもなるでしょう。
優先順で採血に適した血管を選択しよう
採血部位の選択でもっとも多いのが「肘窩の静脈」です。
採血の場合、ルート確保と違って長時間 針を留置するわけではなく、長くても3分で採血が終わるため、可動部位の選択もOK。
肘窩には太い血管が安定して存在するので、多くの人は「肘窩の静脈」を選択しています。
ちなみに、
「肘窩の静脈」には以下の3種類があります。
この中から、
- 血管の太さ
- 深さ
- 弾力性
- 位置
などから判断して、あなたが確実にとれそうな血管を選択すれば◎。
ただし、
血管の選択にあたっては、合併症リスクの観点から優先順があるので、必ず覚えておきましょう。
その順番は次のとおり↓
- 橈側皮静脈(第1選択)
- 肘正中皮静脈(第2選択)
- 尺側皮静脈(第3選択)
肘正中皮静脈の近くには、正中神経が走行しています。
とはいえ、無理な探し方さえしなければ一般的に安全に穿刺できるので、橈側皮静脈と肘正中皮静脈から血管を探してOKです。
尺側皮静脈の近くには、正中神経が走行。さらに上腕動脈も走行しています。浅いところに明瞭に発達した血管でない限り、避けたほうがいいですね。
肘窩によい血管がない場合
こちらの記事【血管が見えにくいときに試してほしい7つの工夫】でも見つからない場合は、前腕や手背、それでもない場合は足背から血管を探しましょう。
いずれの血管でも、患者さんに強い痛みやしびれを訴えた場合は、神経損傷の危険性が高いため、速やかに抜針してください。
深追いは禁物です。
むしろ、最悪の状況になる可能性が高まります。
血管の性質を知っておこう
分岐点はおいしい
血管の分岐部位のまたの間に穿刺できれば、血管が左右に逃げる心配はありません。
▲「分岐部位のまたの間」って何?
固定が難しい部位でも重宝するので、目ざとく見つけたいところ。
ただし、
分岐点以外でも穿刺できるようになる必要があるため、最初のころに少なくとも1回は積極的に真っ直ぐな血管にトライしましょう。
「みえる」血管よりも「触れる」血管を選ぼう
初心者のころはどうしても、皮膚表面に走行していて、目でみえる青っぽい血管に飛びついてしまいがち。
しかし、十分な内径と血管壁の厚さがあって、穿刺に突き破りにくい血管は「触れる」血管です。
血管を探す際、視診のみで行わず、触診も行い、指先で血管を感じられる「しっかりした血管」を見つけるよう心がけましょう。
とはいえ、
深い位置を走行する血管は、はじめはとっつきにくいかもしれませんが、穿刺になれることが名人への近道。
当たり前ですが、
「みえる」うえに「触れる」血管がもっとも理想的な血管です。
盲点になりやすい?! 穿刺に適した「姿勢」とは?
いまいちピンと来ない人もいると思いますが…
実は、血管の選択の次に大事なのが「姿勢」です。
穿刺の理想的な姿勢とは、
「血管が地面に対して平行であるべき」ということが挙げられます。
採血の練習したときを思い出してください。
先輩の腕を借りたとき、同期と練習しあったとき、自然に理想的な姿勢をキープできていたはず。
しかし、実際に採血する現場では、理想的な姿勢を患者さんがしてくれるとは限りません。
練習どおりに針を進めようとすれば、思っていたより針の角度がついて後壁を貫いたり、逆に浅くて上滑りして血管に当たらなかったりします。
たしかに、
四肢に拘縮があったり、ギャッチアップの指示でベッドが倒せない場合もあるでしょう。
その場合は、手技でなんとか補正しなくてはなりませんが、
それ以上に患者さんの姿勢を直す余地があるにも関わらず、見逃しているケースは多いのです。
「なんか難しい」と思ったときは、「患者さんの姿勢に改善の余地はないだろうか」と考える癖をつけ、できる限り理想的な姿勢に近づけれるようにしましょう。
採血の基本
ここで一旦、穿刺するまでのポイントと一連の流れの全体像を確認しておきましょう。
その後に詳しい解説をしていきますね。
穿刺の流れ
駆血を行う理由と注意点
採血するときに、なぜ駆血が必要なんでしょうか?
駆血とは、駆血帯などで皮膚上から血管を怒張させることです。
適切な駆血により、血管の存在や走行の確認が容易になるほか、穿刺自体の成功率も高まります。
一方で、駆血が不十分だと以下のような2つの問題が生じてしまうでしょう。
- 血管が触れにくくなり、走行の確認が不十分になる
- 駆血を行わないと針が血管の後壁を貫きやすくなる
とくに針が太いとき(20G以上)には、突き破る抵抗が大きくなります。
血管が押し潰されてしまうと前壁と同時に後壁も貫いてしまいやすくなってしまい、成功率がガクッと下がってしまうってワケです。
効果的な消毒のやり方
駆血して穿刺部位が決まれば、いよいよ消毒です。
忙しい現場では急かせかしてしまいがちですが、感染消毒薬は十分に乾燥させてから採血しましょう。
なぜなら、
多くの消毒薬は、感想させた状態で消毒効果が発揮されるからです。
ちなみに、
おもな消毒薬はこちら↓
アルコール | ・もっとも一般的な消毒薬 ・コストが安く、広い抗菌スペクトルをもつ ・速乾性に優れる一方で、持続性には乏しい |
クロルヘキシジン | ・アルコール綿が使用不可の患者に対して使用する ・コストがアルコールよりも高い ・速乾性・持続性ともに優れている |
ポピドンヨード | ・末梢ルートで使うことはほぼない ・ルート確保+血液培養の際に利用する施設もある 速乾性に乏しいが、持続性は非常に優れている |
もし穿刺部位の消毒が不十分だと、
蜂窩織炎(看護roo!用語辞典で調べる)や菌血症(Wikipediaで調べる)など感染の原因となってしまいます。
場合によっては命に関わることなので、軽視することなく正しく消毒をして採血に臨んでくださいね。
一度消毒したら、むやみに穿刺部位には触れないようにしよう!
穿刺の前は適度な「脱力」してますか?
採血前に必要以上に力が入ってしまうと、指先から伝わってくる微妙な感覚に鈍感になってしまいます。
適度な「脱力」ができていれば、
針が血管の前壁を貫いた感触とか、血管の中を通るスーッという感触とか、血管壁を乗り越えた感触に気づくことができるでしょう。
とはいえ、
最初のころは誰もがメンタル的に自信が持てないせいで余計な力が入ってしまいがち。
実際にガチガチに緊張して頭まっしろで血管にはいった感覚とかわからない人がほとんどです。
メンタルをすぐに改善することは難しいですが、採血前にちょっとした意識をするだけで簡単に補正することができます。
採血前に深呼吸するだけでOK。
針を持っている手がガチガチに固まっていたり、手先が棒のようになっていて「力が入っているな」と思ったら…
鼻からゆっくり息を吸い込み、口から「ふぅーーッ」と吐き出せば、いい具合に力が抜けるはずです。
新人ナースの最初の難関「血管の固定」
良い血管を見つけても、姿勢を整えても、最終的に固定が甘いと血管に逃げられてしまいます。
とはいえ、
初心者のころは誰でも「血管の固定」がうまくできないもの。
とくに血管周辺の組織が疎な高齢者や、血管が硬くて針が通りにくい若年の患者さんの血管は針をスルリと交わしたり、クネクネと形を変えたりして私たちを惑わします。
血管はいわば天井から吊るした紐と同じ。
ぶら下がっている紐を針で刺そうとしても、刺さることはなくブラブラ揺れるだけですよね。
じゃあ、どうすれば刺すことができるでしょうか?
紐の下側を片手でピンと引っ張りながら、もう反対の手で針を刺せばグサリと刺すことができますよね。
つまり、
「血管の固定」がめちゃくちゃ大事ってことです。
血管を固定する基本フォーム
血管の固定方法は、人によってフォームが異なりますが、もっともスタンダートな方法がこれ↓
針を持たないほうの手(第1指)で、穿刺点の3〜5cmほど下方、血管直上からはギリギリずれるように血管のすぐ左側を押さえる。
血管自体を引っ張るイメージで下方向に引っ張ります。
引っ張る力の強さは、”それなりに強く“です。
初心者のあいだは皮膚はピンと引っ張っていても、血管にテンションをかけるほど引っ張ることができていません。
思った以上に強く下方向に引っ張りましょう。
血管直上、
つまり血管そのものを押さえてしまうと、静脈に還流してくる血液を遮断してしまうことになります。
せっかく駆血によって怒張させたはずの血管が虚脱する原因となるので、少しズレた位置を押さえ引っ張りましょう。
採血を実際にしてみよう!
針の選択「直針」と「翼状針」
採血の針には「直針」と「翼状針」があります。
真空管採血を行う場合は、これらに専用のホルダーを接続して用います。(※最初からホルダーに針がついているタイプもある)
シリンジ採血の場合は、直接シリンジに装着すればOK。
採血するだけであれば、選択する針の太さは21〜23G(ゲージ)の範囲で十分です。
知っていると思いますが、
針が細いものほど患者さんの苦痛は減りますが、採血に手こずった場合は溶血や凝固などのリスクも高くなります。
針の太さはもちろん、
種類によって、それぞれのメリットとデメリットがあるので、もっとも適した針を選択できる看護師になりましょう。
直針と翼状針の特徴、メリット&デメリットについては、以下の記事で詳しく紹介しています↓
穿刺の失敗は「未熟な技術のせい」です。
新人ナースの採血の失敗例でもっとも多いのが、「血管があるのに、なぜか当たらない…」「突き破ってしまう」です。
これらは、針の穿刺角度を調整する技術の未熟さによるものが大半。
つまり、穿刺の基本角度を押さえて経験を積んでいけば、失敗することがなくなるってワケです。
穿刺の基本角度
看護がみえる②には、穿刺の角度は15〜20°と記載があります。
しかし、名人たちは、3段階の角度を使い分けて穿刺しているのが現状です。
- 穿刺角度10°
⇒高齢の患者など、血管が細くて、壁の硬さが貧弱で、皮膚の直下を走行している血管の場合 - 穿刺角度30°
⇒基本の角度。普通の太さ、硬さ、深さの血管の場合 - 穿刺角度45°
⇒血管が硬く、深いところにある血管の場合
上記を参考に、穿刺角度の使い分けができる看護師になりましょう。
針先が外壁を達したあと
針先が外壁を貫いたら、
ルート確保と同じで、針を寝かせて数mm進めましょう。
というのも、
針先が血管内にきちんと入っていないと、血液の血流が弱くなったり、途中で止まったりします。
スピッツ交換時のちょっとしたブレによってもうまくいかなくなるので、しっかり血管内にいれた状態で採血しましょう。
針を寝かせるタイミングは、「逆血確認」できてからです。
逆血が認められたら、そこで力を抜かないことも大切。安心して力を緩めると、血管壁や周囲組織による反発で針が一緒に抜けてしまいます。
とくに血管が深い場合は、皮下組織も厚く反発力も強いので注意しましょう。
ちなみに、
針を寝かせるときのコツとしては、
「針のお尻を下ろすイメージで、針先の先端を支点に置いて寝かせる」です。
針のお尻側に支点を置くと、針先が情報に跳ね上がり、血管内からスルリと抜けてしまいます。
採血の手技
針先がしっかり血管内に入ったら、採血をしていきましょう。
シリンジ採血の場合は、溶血しないように、ゆっくりと陰圧をかけていきます。真空管採血の場合は、順次、スピッツをホルダーに差し替えていきましょう。
採血途中での失敗で多いのが、「針先のブレ」によるもの。
採血中に、シリンジやスピッツの操作による動きをいかに指先に伝えずに安定させるか工夫が必要です。
翼状針はこの点では有利で、片方の手で翼部分を軽く皮膚に押し付けて固定すれば◎。
しかし、直針の場合は、動きやすいので要注意です。
針を最終ポジションにしたら、ホルダーを持った右手の第2〜5指を患者さんの腕に軽く押し付けて安定した固定をしましょう。
こんな感じですね↓
スピッツ操作をするときも、なるべく余計な衝撃が加わらないように、優しくゆっくり丁寧に入れ替えてくださいね。
採血の順番
数種類あるスピッツに関して「何となく」「適当に」とっている人も多いですが、望ましい順番があります。
なぜならば…
スピッツの特性、つまり何を検査するためのスピッツなのかや、スピッツの中に含まれる抗凝固剤などの薬剤といった要因によって決まるのです。
スピッツの中には、白い粉やゼリー、フィルム、液体など違うものが入っていますよね。
詳しくは【スピッツの入れる順番】で解説していますが、頻用するスピッツ4種類を以下のように覚えましょう。
まず柱となるのが以下の順番です↓
凝固⇒血算⇒血糖
語呂合わせ:(血液が)ぎょう(凝)さん(算)と(糖)れる
…で、これに生化学を加えるのですが、採血方法によって2つのパターンがあります。
- 真空管採血:生化学⇒凝固⇒血算⇒血糖
- シリンジ採血(分注):凝固⇒血算⇒血糖⇒生化学
基本は「凝固して困る順」でOKです。
血液流出の勢いは、穿刺直後がもっとも多く、時間とともにだんだん弱まります。
後になればなるほど、スピッツへの流入にも時間がかかり、血液の凝固が起こりやすくなるのです。
基本的には「凝固して困る順」にスピッツを入れていくのがいいでしょう。
ただし、真空管採血の場合は、別の理由で1本目に生化学スピッツをとります。
実は…
穿刺直後にでてきた血液には損傷した細胞からの組織液が若干含まれていて、凝固系に影響してしまうのです。
例えば、APTT値だと、なんと20%の誤差がでてしまいます。
というわけで、
最初の血液を凝固スピッツに入れるのは得策ではありません。
生化学スピッツは、凝固系の影響を気にしなくてもいいので、真空管採血ではあえて最初にとるのです。
補足:正確なスピッツの順番
シリンジ採血 | 真空管採血 | |
1 | 凝固用 | 血清用 |
2 | 赤沈用 | 凝固用 |
3 | ヘパリン入り | 赤沈用 |
4 | EDTA入り | ヘパリン入り |
5 | 解糖阻害薬入り | EDTA入り |
6 | 血清用 | 解糖阻害薬入り |
7 | その他 | その他 |
スピッツに関するよくある失敗については、以下の記事でチェックしておこう↓
スピッツの転倒混和のやり方
血液とスピッツの内の薬剤が完全に混ざり合うように、5回以上の転倒混和(ゆるやかに)を行います。
このときに泡を立てたり、激しく混ぜたりすると、溶血の恐れがあるため、ゆるやかに優しく転倒混和するように注意しましょう。
上のイラストのように手首を軸にぐるりと90°回して混和するのがコツです。
採血した後の処置|止血までキッチリ行うのが採血
「家に帰るまでが遠足」の言葉と同じで、止血をきっちり行うまでが採血です。
穿刺部位の脇に消毒綿を添えて、角度を変えないようにすばやく針を抜くと同時に圧迫します。
止血テープなどを貼り、そのまま患者さんにもまずに5〜10分圧迫してもらいましょう。(止血ベルトなどでもOK)
血管壁がもろい場合、抗凝固剤などを服用中の患者さんは、止血に時間がかかるため、通常よりも+5〜10分止血時間を長くしたほうが◎。
このときに揉んでしまうと、止血を阻害して、皮下出血する恐れあり。(⇒血腫が原因の神経損傷)
揉まずに圧迫してもらうよう伝えてくださいね。
また、消毒液がひたひたすぎると、その成分により血管が拡張したり、血小板凝集を阻害したりするため、軽く絞ってから使いましょう。
採血中、採血後の患者さんの異変が起きたときの対処法
ここからは、患者さんの異変に対する注意事項です。
採血トラブルでよくあるのが以下のこと。
- 迷走神経反射
- 神経損傷
- 採血失敗に対するクレーム
①迷走神経反射
迷走神経反射とは、迷走神経の興奮で末梢の血管が拡張します。
それに伴い血圧が低下して、脳に十分な血液が送れなくなり、顔面蒼白になったり、冷や汗、意識消失…などを患者さんが起こすことです。
今までに採血で倒れたことがある場合は、座位ではなく臥床で採血すれば予防できます。
ただ今までの採血でなったことない人も起こす可能性があります。
そのときは速やかに応援を呼び、側臥位して寝かせ、血圧低下があれば下肢を挙上すればOK。
【採血で気分不良になったときの対処法】ではもっと詳しい対処方法(6ステップ)を紹介しているので、ぜひ参考にしてみてください。
②神経損傷
採血中のしびれ対応は甘く見ていると危険です。
というのも、裁判になったケースもあります。
賠償保険に入っていても精神的ストレスになるので、採血中のしびれ対応は覚えておいたほうが◎。
穿刺したあとにしびれがあると言われた場合は、
- 速やかに抜針する
- 穿刺部位の観察
- 抜針後の痛みを確認
この3ステップを心がければOKです。
絶対にやったらNGな対処方法は【看護師が訴えられないためのしびれ対処方法】をチェックしましょう。
③採血失敗に対するクレーム
百発百中で採血できる!
そんな人はこの世の中には存在しません。
凄い神技を持っているベテラン看護師、検査技師、ドクターでも失敗してしまうことがあります。
採血で失敗したときに、対応を間違うと大クレームにつながるので、謝り方は知っておいた方が◎。
といっても簡単なこと。
言い訳せずに素直に謝るだけでOKなんですが、意外とできない人が多いんです。
新人看護師さんのよくある採血の疑問&質問【Q&A】
Q1.スピッツを交換している間に固定が甘くなるのはなぜ?
「穿刺が浅いこと」と「固定方法」が考えられます。
この記事内でも詳しく説明しましたが、
逆血確認後、針を少し寝かせ2〜3mm進めるのがポイントです。
翼状針の場合、片方の手で翼部分を軽く皮膚に押し付けて固定すれば◎。
直針の場合は、針を最終ポジションにしたら、ホルダーを持った右手の第2〜5指を患者さんの腕に軽く押し付けて安定した固定をしましょう。
⇒直針の固定方法がうまくできない方は、【こちら】の記事を参考にしてください。
Q2.採血と一緒に血糖測定したい
採血と同時にBS測定する方法は【こちら】の記事で紹介しています。
ただし、測定する前に確認してほしいことがあります。
指先(毛細血管)と腕(静脈血)では測定値が異なるのは知っていますか?
毛細血管はブドウ糖が組織に運ばれているときの血液ですが、静脈血はブドウ糖が消費された後の血液です。
採血と同時に血糖測定した場合、髙値に出てしまうので実施していない病院も少なくありません。
リーダーや先輩に一緒に測定しても良いのか必ず確認しましょう。
Q3.輸液中、ルートキープされている腕で採血ってダメなの?
原則的に、点滴確保部より末梢側であれば採血可能です。
点滴実施部より末梢側で15cm離した状態での採血ではデータに変化はないという実証研究もあります。
ただ、頑なにダメという先輩もいるので、そのときは反発せずに別の場所で行ったり、上司に相談したりしましょう。
Q4.直針と翼状針の使い分け
- まっすぐ
- 太い
- 弾力ある
- 肘正中皮静脈(表面に近い)
こんな人の場合は、直針でも実施可能です。
しかし、最近は痛みの軽減や神経損傷の対策として翼状針を推奨する病院も増えてきています。
コスト面では直針のほうが安いですが、患者さんにとっては翼状針の方がメリットが高いと言えるでしょう。
⇒もっと詳しく表でみたい方は、【こちら】の記事をご覧ください。
Q5.血管が逃げてしまう…。どうすればいい?
血管が逃げて当たらない原因は、2つあります。
1つめは、穿刺前の血管の引っ張り(テンション)が弱いこと。
もう1つは、穿刺角度です。
この2つのポイントを意識すれば、逃げられることはないでしょう。
Q6.駆血帯を巻く時間で気をつけることは?
駆血時間が長いと検査値に影響が出ます。
1分を超えると血液凝固が起こりやすくなるので、1分以内に終わるようにしましょう。
Q7.「痛点」を避けて採血ってできるの?
「痛点を避けるなんて運でしょ」と思う人も多いかもしれませんが、痛点を避けて採血する方法はあります。
具体的には、針の先端を皮膚に刺さらない程度に平行に近い形で押し付け圧迫し、そこに痛みがあれば痛点に当たっています。
1mmほどずらしたところに疼痛を感じない温点があるので、そこを狙いましょう。
Q8.採血の途中でポタポタと血液量が減ってしまう理由は?
Q9.手袋を装着するベストなタイミングは?
手袋ありでの血管探しは指先の感覚を鈍らせます。
そんなときは血管を探す方の手だけ直前に装着してもOK。(結構そういう人は多いです。)
ちなみに私の場合、駆血帯を巻く⇒血管を探す⇒アルコール消毒⇒手袋を装着⇒針の準備⇒穿刺という流れで行っています。
Q10.駆血帯を外し忘れて抜針したらどうなりますか?
最後に|失敗を反省して改善していこう
ここまでの十分な理論をもって採血すれば、かなりの高い確率で成功が得られますが、それでも1回目のトライでうまくいかないことがあります。
その場合は、修正を試すことになるでしょう。
修正を試さなくてはならない状況は、基本的には黒星であるのは確かです。
もちろん修正が上手くいくこともあります。
私も何度も経験しましたが、
それはまぐれに近いことが多いです。
計算ずくで修正してできるんだったら、最初からその想定で刺せばうまくいったはずですよね。
ホッとする気持ちもわかりますが、
修正が成功したことを喜ぶよりも、1回目のトライの失敗を反省して改善していきましょう。
それが名人への近道です。
採血やルート確保が得意になれば、看護師としての自信になります。また、病棟やクリニックはもちろん、人気の美容系や健診でも重宝されるので転職先に困らないでしょう。
この記事をきっかけに
ニガテ意識があった採血をあなたが克服できれば嬉しいです。
もし転職するタイミングを「採血ができるようになったら」「採血とルート確保が自立できたら」と考えている看護師さんは以下の記事も参考にしてください。