採血スピッツの入れる順番って「凝固しやすい順」だから…
凝固(黒)→血算(紫)→血糖(灰)→生化学(茶)でよかった?
真空管採血とシリンジ採血では順番が違うんだっけ…??
検査結果に大きく影響する「採血スピッツに入れる順番」。
採血手技に不安を抱いている新人看護師さんは多いのではないでしょうか。
一般的には6〜7月ごろに採血練習が始まりますが、「採血スピッツに入れる順番」につまずく新人看護師も多くいます。
そこでこの記事では、「採血スピッツの入れる順番」の覚え方を紹介します。
本記事を読むことで、採血スピッツの順番でつまずく理由もわかり、状況に合わせた判断もできるようになるはずです。
当ブログ「中堅ナースの日常」で紹介する記事は、正確な情報を届けるをモットーとしています。
もちろん本記事を書くにあたり、標準採血法ガイドラインなど参考文献をもとに記載しているので、最後まで安心してご覧ください。
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採血スピッツの入れる順番。みんながつまずく原因はこの3つ!
採血スピッツの入れる順番は、根拠を理解したうえで暗記が必要なものです。
ところが、プリセプターからは「採血のやり方」のテクチャーが中心で、「スピッツの入れる順番」はサラッと説明されるだけで終わることがほとんど。
つまり、採血スピッツの入れる順番は自主学習が中心になります。
その際、次の3つの原因でつまずいてしまうのです。
採血スピッツに関して明確なエビデンスがない
意外かもしれませんが、
「採血した血液をどのスピッツから入れるか」に関して、ハッキリとしたエビデンスが得られているわけではありません。
そのため、メーカーや施設で「スピッツの入れる順番」が異なり、看護技術本で記載されている順番を守っても注意される場合もあるのです。
例えば…
先に入れたスピッツの内容物が、次のスピッツに混入することを防ぐことを優先する「独自の順番」を定めている施設も。
その場合、次の順番で入れます↓
- クエン酸ナトリウム(凝固スピッツ:透明な液体)
- 凝固促進剤(生化学スピッツ:フィルム)
- ヘパリン(その他スピッツ:透明のフィルム)
- EDTA(血算スピッツ:白い粉)
- 解糖阻止剤(血糖スピッツ:白い粉)
採血スピッツの順番を覚える前に、
まずマニュアルで「あなたが働く病院で定められた基準」を確認するようにしましょう。
そのときによって採血スピッツの種類も本数も変わる
採血スピッツの種類は、約50種類ほど存在し、検査する項目によって使用するスピッツは異なります。
大抵の場合、複数の検査が同時に行われるため、1回の血液検査で複数の採血スピッツを使用しますよね。
すべての診断の基本となる「生化学」や「血算」は、大体どんなときでも採りますが、採血のオーダー内容は患者さんの状況次第。
普段から見慣れたスピッツだけのときもあれば、見たことないスピッツも含んで5〜6本採らないといけないときもあります。
医療現場ではよく「ケースバイケース」と言われることが多いですが、採血スピッツも例外ではないのです。
真空管採血とシリンジ採血で順番が異なる
採血方法は2通りあって、「真空管(ホルダー)」を使った方法と「シリンジ(注射器)」を使った方法があります。
この2つの大きな違いは、血液がスピッツに入るタイミングです。
後ほど詳しく解説しますが…
真空管採血の場合は、採血中にスピッツを差し替えるだけでOK。
一方、シリンジ採血の場合は、採血後にシリンジで採った血液を分注する必要があります。
ようするに、フレッシュな血液か、時間が経った血液かで、スピッツに入れる優先順位が変わるってわけですね。
この違いについて最初から理解できている新人看護師は少ないため、余計混乱してしまうのです。
これでバッチリ!「採血スピッツの入れる順番」の覚え方
じゃあ、ここからは採血スピッツの覚え方を詳しく、分かりやすく解説していきますね。
スピッツの入れる順番で大事なことは、「検査データへの影響が少ない順で入れる」ということです。
もちろん、
痛くないように採血する、採血の合併症を起こさない…などもありますが、正しく検査できないと意味がありませんよね。
患者さんが今どんな状態なのか、正しくアセスメントするうえで、客観的な「採血データ」は欠かせないってわけです。
とはいえ、明確なエビデンスがない採血スピッツの順番では、細かい理屈を並べるとキリがありません。
ですので、頻用する4種類のスピッツを以下のように覚えてしまいましょう。
柱になるのが以下の順番です。
凝固(黒)⇒血算(紫)⇒血糖(灰)
プリセプターから聞いた方も多い「凝固しやすいものから入れる」の順番です。
ぎょう(凝)さん(算)と(糖)れる
と覚えちゃおう!
ここに「生化学(茶)」を加えていくのですが、採血方法で2パターンあります。
- 真空管採血の場合:生化学(茶)⇒凝固(黒)⇒血算(紫)⇒血糖(灰)
- シリンジ採血の場合:凝固(黒)⇒血算(紫)⇒血糖(灰)⇒生化学(茶)
なんで採血方法によって「生化学(茶)」の順番が違うの?
採血スピッツに入っている薬剤が異なる理由
「ぎょうさんとれる」
柱になるスピッツの入れる順番の覚え方です。
この順番は、どのように決まったのでしょうか。
採血スピッツの種類によって中に入っている薬剤は異なります。
例えば、生化学(茶色)はゼリーっぽいものが入っていませんか?
凝固(黒)は透明の液体、血糖(グレー)と血算(紫)は白い粉が入っているはず。
このようにスピッツごとに中身が違うのは、検査で使う「血液成分」が異なるからです。
簡単にいうと…薬剤を変えて「必要な成分」を取りやすくするってこと。
じゃあ、スピッツに入ってる液体やゼリー、白い粉がどんな作用をする薬剤なのか知っていますか?
- 生化学のスピッツ:半透明のゼリーの血清分離剤とフィルムの凝固促進剤
- 血算・血液型のスピッツ:白い粉の抗凝固剤
- 凝固・赤沈のスピッツ:透明な液体の抗凝固剤
- ヘパリンナトリウムのスピッツ:フィルムの抗凝固剤
「ぎょうさんとれる(凝固⇒血算⇒血糖)」のスピッツには、抗凝固剤が入っています。
駆血帯の締めている時間が長引いたり、穿刺部からの組織液の混入などの要因により、凝固や血算などの測定値に影響が出ることがあります。
また、血液流出の勢いは、穿刺直後がもっとも多く、時間とともにだんだん弱まります。
あとになればなるほどスピッツへの流入にも時間がかかり、血液の凝固が起こりやすくなってしまうのです。
だから、基本的には「凝固して困る順」がいいので、「凝固⇒血算⇒血糖」で採りましょう。
反対に、「凝固促進剤」がはいっている生化学スピッツは、優先順位は低いってことですね。
ちなみに、以下の図は採血したあと検査室では、以下のように検査を進めていきます。
あれ…?
「凝固して困る順」なのになんで真空管採血では生化学が1本目なの??
【真空管採血の場合】スピッツの入れる順番と注意点
真空管採血のスピッツに入れる順番は、以下のとおり↓
真空管採血の場合:生化学(茶)⇒凝固(黒)⇒血算(紫)⇒血糖(灰)
先ほど「凝固して困る順」で採ると言いましが、真空管採血の1本目は生化学スピッツです。
「言ってること違うやん!」「もう訳がわからなくなってきた…」という方もいるかもしれません。
真空管採血では、生化学スピッツを1本目に入れる「凝固」に関して別の理由があるのです。
生化学スピッツを1本目に入れる理由
真空管採血の場合、血液はどのようにスピッツに入りますか?
スピッツに直接血液が入りますよね。
真空管採血は、採血後にスピッツに血液を移す必要がなく、スピッツを差し替えるだけで必要な血液量を維持できます。
ところが、穿刺したときに少量の組織液が混入し、凝固の原因になることがあります。
たとえば、APTT値(活性化部分トロンボプラスチン時間)は、なんと20%もの誤差がでることも。
せっかく凝固しない順で入れても、別の理由で凝固しては意味がありません。
真空管採血では、血液が凝固してしまっても問題ないものから入れるため、あえて「生化学スピッツ」を1本目に採ります。
凝固スピッツを後回しにしても検査データに影響します。
APTT(活性化部分トロンボプラスチン時間)やPT(プロトロンビン時間)が延長するため、必ず2本目には凝固スピッツを入れましょう!
「翼状針」を使う場合は要注意!
生化学スピッツを1本目に採る理由はもう1つあります。
翼状針+真空管採血した場合、「量不足」を予防するためです。
1本目を生化学スピッツ以外から採ってしまうと、必要量が採れない場合があります。
というのも、真空管採血では、直接スピッツに血液が入りますよね。
スピッツの中には必要量に応じた陰圧がかかっています。
例えば、血算スピッツだったら必要量な2ml分の陰圧。
ところが、1本目のスピッツには、翼状針のチューブ分だけのエアーが入るため、血液量がその分少なくなってしまうのです。
ちなみに、チューブの長さは3cmほどなので、約0.4mlの採血量が足りなくなります。
凝固スピッツなどでは、抗凝固剤との混和比率が重要で、正しい量を採取しないと取り直しとなります。
とくに混和比率が厳しく、取り直しが多いスピッツはこの2つ↓
- 凝固スピッツ(黒)の採血量はピッタリ1.8ml
⇒クエン酸ナトリウム:血液=1:9 - 赤沈スピッツ(オレンジ)の採血量はピッタリ1.6ml
⇒クエン酸ナトリウム:血液=1:4
線までピッタリ採血しないと正しい検査はできません。
夜勤の忙しい時間帯に検査室から「取り直し」の電話がかかってこないように、しっかり決められた量を採ろう!
シリンジ採血の場合は、「凝固から」分注しよう!
シリンジ採血の場合、採血後に分注しなくてはなりません。
血液が凝固する前にすばやく抗凝固剤と混和する必要があるため、凝固用スピッツから入れましょう。
採血の基本である「凝固しやすいものから入れる」に忠実に従って大丈夫です。
スピッツを差し替える真空管採血とは異なり、分注した血液を入れるので組織液の混入の心配はありません。
【まとめ】採血スピッツを入れる順番の覚え方
以上、採血時のスピッツに入れる順番の覚え方を紹介しました。
基本的には「凝固して困る順」がいいので、柱になるのが以下の順番で覚えましょう。
凝固(黒)⇒血算(紫)⇒血糖(灰)
「ぎょう(凝)さん(算)と(糖)れる」と覚えればOK!
ここに生化学(茶)を加えていくのですが、採血方法で2パターンあります。
- 真空管採血の場合:生化学(茶)⇒凝固(黒)⇒血算(紫)⇒血糖(灰)
- シリンジ採血の場合:凝固(黒)⇒血算(紫)⇒血糖(灰)⇒生化学(茶)
真空管採血するとき、最初にとるのは「生化学スピッツ」です。
穿刺したときに少量の組織液が混入するため、凝固が生じる可能性があります。
凝固しても問題ない生化学スピッツから採りましょう。
また、真空管+翼状針で採血する場合、翼状針のチューブ分(約0.4ml)の血液が足りなくなります。
先ほどの「凝固してもいい」+「血液量が多少減っても問題ないスピッツ」という条件も加わるので、「生化学スピッツ一択」となるはずです。
で、シリンジ採血の場合は、採血の基本「凝固したら困る順」でOK。
これで採血時のスピッツの順番はバッチリ。
ただ、スピッツの入れる順番に関しての明確なエビデンスがないため、施設によって入れる順番が異なります。
今回紹介した順番は、「標準採血法のガイドライン」をもとに解説していても、先輩たちから注意を受ける場合も。
ですので、あなたが働く病院のマニュアルも確認しておくと安心ですね。
もし本数が多くて順番に迷ったら、真っ先に先輩に相談することが不要なトラブルを避けるコツ。
とはいえ、相談するにも勇気入りますよね。
「聞いたらイヤな顔されそう…」と心配な方、相談しにくいという方は、困っている理由を先輩にわかるように伝えるようにしましょう。
たとえば…
真空管採血なので1本目に生化学スピッツを採って、その後は「凝固⇒血算⇒血糖」の順で採ればいいのはわかるのですが、
このスピッツはどこに入れたらいいのかわかりません。
こんなふうに相談すれば、先輩もアドバイスしやすくなります。
ただ順番を教えてほしいと言われても、「基本くらい自分で調べて」とか「前に教えたよね?」と思う先輩もいるかもしれません。
ですが、先ほどのように具体的に相談すれば、
「基本的なことは理解してるから順番だけ教えるだけで大丈夫そう」といったようなアドバイスがしやすくなりますよね。
プリセプターといっても、ずーーーっとあなたを監視しているわけではありません。
あなたがどこまで理解していて、何に困っているのかわかるように伝えることが、忙しい先輩からアドバイスをもらうコツですよ。
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