いつも血糖測定をしている患者さんに採血オーダーが出ている。
「同時に血糖測定したいけど、どうやるんだろう…?」「真空管採血って、同時に血糖測定できるの?」と困っている看護師さんも多いことでしょう。
現場ではよくあることなのに看護技術本には載っていないため、先輩看護師でもそもそもやり方が分かっていない場合もあります。
そこで今回は、採血と同時に血糖測定をする5つの方法を紹介します。
シリンジ採血と真空管採血、それぞれのやり方をイラスト付きで分かりやすく解説していきますね。
【登場人物紹介】
杏ちゃん
急性期病棟で働く1年目看護師。看護師の仕事は好きだけど、病棟の人がイヤで「辞めたい」と思っている。とはいえ、新しい環境に飛び込むのも不安…。
亜子先輩
2回転職成功していて、楽しそうに働く7年目看護師。杏ちゃんがめちゃくちゃ頼りにしている先輩で、きわどい質問もバシバシ答えてくれる。
採血と同時に「血糖測定」しても大丈夫?
採血と同時に血糖測定しても大丈夫なんですよね?
どうしてそう思ったの?
採血と指先の血液では、「血糖値」が違うと聞いたことがあったような気がしたので…。
採血と指先の血液では、血糖値の差が10〜20㎎/dlほど違います。
そんなにも違うんだ…!
でも、どうして違うんだろう…。
同じようにみえる血液ですが、指先は「毛細管血」で、採血は「静脈血」と異なります。
毛細管血はブドウ糖が組織に配られているときの血液であるのに対して、静脈血はブドウ糖が消費された後の血液です。
あ…!
だから、血糖値が微妙に異なるんだ。
ちなみに…動脈血>毛細管血>静脈血の順に血糖血が高くなります。
さっきも言ったけど、自己血糖測定(SMBG)と採血(静脈血)の差は、10〜20㎎/dlほど。
採血と同時に血糖測定する基準
やっぱり採血と同時に血糖測定しないほういいってことだよね?
そうとも言い切れません。
採血で測定するよりも手間は増えるけど、指先で測定したほうが正確な値ではあると思います。
ただ、細い針とは言え、指先に穿刺するので「全く痛くない」とは言い切れないよね。
病院や病棟によって考え方が異なるため、一度確認したほうがいいでしょう。
むむむ…。
(プリセプターに聞いたら「はぁ〜」とか言われそうで聞きたくないよ…)
そもそも先輩たちがどうやっているのか分からない場合は、リーダーに確認してから実施したほうが◎。
先輩たちは採血と同時に血糖測定しているけどイマイチやり方が分かっていないだけの場合は、次に紹介する5つの方法を参考にしましょう!
(先輩たちは実施しているから、聞かなくても良さそう…)
採血と同時に「血糖測定」する方法
じゃあ、さっそく採血と同時に血糖測定する方法を解説するね。
と言いたいのですが、その前に1つ確認があります。
採血の方法は、「シリンジ採血」と「真空管採血」の2パターンあるのは知っているよね?
も、もちろん…。
ドキッとした方、それぞれの違いがイマイチわかっていない方は、先に【シリンジ採血と真空管採血の違いって何?】を読んだほうが、このあとの流れがスッと頭に入るはずです。
シリンジ採血と真空管採血では、同時に血糖測定する方法が違う
シリンジだろうが、真空管だろうが、「採血+血糖測定」の手順は同じ。
【採血+血糖測定する手順】
- 採血部位を決める
- 駆血帯をする
- アルコール消毒する
- 簡易血糖測定器の電源をオン、センサー(チップ)をセットする
- 穿刺する
- シリンジを引くorスピッツを入れ替える
- 駆血帯を外し、抜針する
- 圧迫止血する
- スピッツに分注する(※シリンジ採血時のみ)
- 血糖測定を行う
シリンジ採血でも、真空管採血でも手順はほぼ同じ。
ですが、血糖測定する方法が異なります。
え…どういうこと?
手順はほぼ同じなのに、なんで血糖測定する方法が異なるの?
採血時に使う「物品」が異なるからです。
シリンジ採血では、シリンジと針を使用します。一方、真空管採血では、ホルダーと針。
採血と同時に血糖測定する場合、センサー(チップ)にどうやって採血の血液を垂らすか?がポイントになります。
デキスターの電源オンは、穿刺する前に!
採血と同時に血糖測定する場合、デキスターの電源とセンサーを入れるタイミングが重要です。
血糖測定する直前だと遅いの?
最悪、直前でもできますが、忙しい朝は1分でも1秒でも時間が惜しいよね。
時間のロスを減らしたいなら、穿刺前に電源オン+センサーをセットしておいたほうがいいでしょう。
ただ、電源をオンして2分間操作がなければ自動にオフされてしまうため、採血は素早く行うようにしてくださいね。
方法①採血と同時に血糖測定【シリンジ採血の場合】
まずはシリンジ採血で同時に血糖測定する方法を紹介します。(これに関しては、たぶん疑問を抱く看護師さんは少ないと思いますが…)
手順は次の通りです↓
【シリンジ採血+血糖測定する手順】
- 採血部位を決める
- 駆血帯をする
- アルコール消毒する
- 簡易血糖測定器の電源をオン、センサー(チップ)をセットする
- 穿刺する
- シリンジを引く
- 駆血帯を外し、抜針する
- 圧迫止血する
- スピッツに分注する
- 血糖測定を行う
先ほども言いましたが、通常の手順の一番最後に血糖測定を行います。
その理由は、シリンジ採血する際、もっとも優先すべきなのが「スピッツの分注」だからです。
採血している瞬間から血液は凝固しているんだっけ…?
血液が凝固してしまうと正しく検査できない項目もあるため、スピッツの分注を素早く行いましょう。
スピッツの順番がイマイチ分かっていない方は、【スピッツの入れる順番の覚え方】を参考にしてくださいね。
センサーに血液を垂らす方法2パターン【シリンジ採血の場合】
シリンジ採血+血糖測定する場合、センサーの袋に血液を垂らし、センサーに吸わす方法がオススメ。
この方法は、私が病棟(糖尿病内分泌内科)に勤務していたとき、先輩の教わった方法です。
ニプロの場合、センサーはボックス。テルモの場合は、チップなので、「袋」が出ません。
そんなときは、アル綿や翼状針の袋を代用すればOK。
血液汚染を最小にしたいという方は、針を外してシリンジの筒先から血液を吸わす方法もあります。
どちらが正解ということはないので、自分のやりやすい方法で行ってくださいね。
方法②採血と同時に血糖測定【真空管採血の場合】
続いては、真空管採血で同時に血糖測定する方法です。
多くの看護師さんが悩むのがこっち。
一連の採血+血糖測定の流れは次の通りです↓
【真空管採血+血糖測定する手順】
- 採血部位を決める
- 駆血帯をする
- アルコール消毒する
- 簡易血糖測定器の電源をオン、センサー(チップ)をセットする
- 穿刺する
- スピッツを入れ替える(転倒混和)
- 駆血帯を外し、抜針する
- 圧迫止血する
- 血糖測定を行う
…で、一番気になるのが「どうやってセンサー(チップ)に血液を吸わすのか?」ですよね?
やり方は3パターンあります。
- シリンジを使う
- 翼状針内の血液を使う
- ホルダーの先端の血液を使う
え…3パターンもあるの?
それぞれのやり方を解説していくので、自分にあった方法を見つけてくださいね。
【その1】シリンジを使って血糖測定をする
1つ目の方法は、シリンジを使う方法です。
採血のあと、ホルダーから翼状針を外しシリンジを装着。
先ほど紹介した【シリンジ採血の場合】を参考にしてセンサーに血液を吸わせましょう。
ただ、5ccシリンジは1つ10円くらい。
血糖測定のためだけに使うにはコストがかかりすぎだし、手間もかかります。
コスト面と手間から考えると、あまりオススメできません。
【その2】翼状針内の血液を使う
2つ目の方法は、翼状針を使った方法です。
採血した後、翼状針のロックをせずに抜針。針先を下にしてチューブを屈折圧迫すれば、チューブ内の血液がでています。
ただ、普段ロックの習慣がついている看護師さんは、抜針時にうっかりロックしてしまうことも。
また、翼状針のロックをしないので、針刺しリスクがあるのであまりオススメしません。
【その3】ホルダーの先端の血液を使う
最後は、ホルダーの先端の血液を使う方法です。
難しい工程は一切なく、採血が終わった後、翼状針とホルダーを外して測定するだけ。
コストもかからないし、針刺しリスクもないのでオススメ!
誰でも簡単にできる方法です。
【まとめ】採血と同時に血糖測定する方法は5パターン
以上、採血と同時に血糖測定する方法を紹介しました。
最後にもう一度おさらいです。
採血+血糖測定の手順
【採血+血糖測定する手順】
- 採血部位を決める
- 駆血帯をする
- アルコール消毒する
- 簡易血糖測定器の電源をオン、センサー(チップ)をセットする
- 穿刺する
- シリンジを引くorスピッツを入れ替える
- 駆血帯を外し、抜針する
- 圧迫止血する
- スピッツに分注する(※シリンジ採血時のみ)
- 血糖測定を行う
朝の採血は時間との勝負。
1分でも1秒でも時間のロスを減らしたいなら、穿刺する前に測定器のセッティングを済まておきましょう。
シリンジ採血+血糖測定する方法2パターン
- センサーの空袋に血液を垂らして吸わす方法
- 針を外してシリンジの筒先から血液を吸わす方法
真空管採血+血糖測定する方法3パターン
- シリンジを使って血糖測定する方法
- 翼状針内の血液を屈折圧迫する方法
- ホルダーの先端の血液を使う方法
紹介したやり方の中には、針刺しのリスクが高い方法もあるため、十分に注意して行いましょう。
朝はバタバタと忙しいですが、急いでも焦ってミスが増えるだけ。
落ち着いて慎重に行うことが、早く終わらすコツです。
採血がもっと上手になりたい、早く一人立ちしたい看護師さんは、以下の記事もチェックしておこう。
採血で困らないための全知識を、分かりやすく解説しています↓
新人看護師さんのよくある仕事の悩み【記事一覧】
- 【そうだったのか…】段取り上手こそ「優先順位の立て方」の基本
- 【知らなきゃ損】仕事の抜けが多い看護師さんが、負のループから抜け出す方法
- 【落ち込むな】「あの子は使えない」と言われたら、見限る準備をはじめる理由
- 【マジムリ…】今のまま我慢すれば解決する?いじめにあったときに取るべき行動は2択