突然ですが、採血するときを思い出してください。
駆血帯を巻く前後の患者さんの声掛けで、「親指を中に入れて握って下さい」と言っていますよね。
それは、なぜですか?
「血管を見やすくするため」と即答できても、親指を入れる握る理由は知らない人も多いです。
そこで今回は、採血するときに、親指を中に入れる理由を紹介します。
ちなみに・・・
当ブログ「中堅ナースの日常」で紹介する記事は、正確な情報を届けるをモットーにしているため、参考文献をもとに記載。
この記事もしっかり参考文献を見て書いています。
参考文献については【こちら】を参照してください。
意外と知らない「採血」ランキングTOP3
「ただ握る」と「親指を中に入れる」の違いとは?
採血=親指を中に入れる
昔からある風習ですよね。
改めて聞かれると困りますが、血管を見つけやすくする先人たちの知恵です。
ですが、ちゃんと根拠があります。
前腕部の筋肉を収縮
⬇
末梢血の還流を促進
⬇
末梢の静脈が怒張する
論よりも証拠。
「ただ握る」と「親指を中に入れて握る」の違いを試してみました〜!
どうですか?
ただ握る場合と、親指を中に入れて握った場合では、血管の見え方が差があります。
こんな人を採血するときは絶対!
ごめんなさい。
もともと私の血管は駆血帯を巻かなくても見えます。(※上写真は駆血帯ありです)
だから、劇的に変化をお伝えすることができませんでした。
本当にごめんなさい。
ですが、採血をするときに、採血で血管が見えにくいな〜と思う人いますよね?
血管が見えづらい3タイプ↓
- 太っている人
- 入れ墨が入っている人
- 筋肉質な人
この3タイプに該当する人に、親指を入れて握ってもらうと効果あり!
あと、採血ではなくルートキープするときにも◎。
皮膚の奥に隠れている血管を目で確認しやすくなりますよ。
採血するとき、直針も使ってる?
翼状針しか使っていない人は、【「翼状針」と「直針」の使い分け】をチェックしておくと、今よりもスピーディーに採血できるようになるよ。
【親指を中にいれる以外】良い血管を見つける方法5パターン
良い血管を見つけるために、『親指を中に入れてギュッと握ってもらう』は必須です。
しかし、親指を入れてグーしても採血や点滴向きの血管が見つからない場合もあります。
そんなときは、次の5つの方法で探してみましょう。
- 駆血帯の巻く強さ
- 90°内転させる
- 前腕マッサージ
- 腕をだらんと下げてもらう
- 臥床で採血
※血管が見えづらいときは、1から順番に試してください!
駆血帯は強く巻きすぎると、血管が見えづらくなる
せっかく親指を中に入れてギューッと握ってもらっても、駆血帯の巻く強さが強すぎると血管は浮き出てきません。
今さらですが、駆血帯を巻く理由は知っていますよね?
カンタンに言うと…静脈血の還流を止めることで、末梢の静脈が膨れて穿刺しやすくするためです。
駆血帯の巻く力が強すぎると、動脈の流れも止まり入ってくる血流までも止めてしまう行為。
つまり、駆血帯よりも末梢にある血液量が減り、
- 血管も見えづらい
- 採血しても途中で止まる
アナタにとってデメリットしかありません。
駆血帯はほどよい力で留めるのが◎。
90°内転させる
親指を入れてギュッと握る、駆血帯をほど良い強さで巻く、それでも肘正中皮静脈に血管が出てこない場合は、前腕を90°内転させてみましょう。
たったこれだけで、見えづらかった血管が突然、ボコッと出てくることも…。
それでもダメなら、次の方法を試してください。
前腕マッサージをする
駆血帯を巻き、親指を中に入れてギュッと握ってもらったら、手首から肘に向けて前腕をマッサージ。
2〜3回繰り返したら、見えていなかった血管が浮き出て見やすくなります。
腕をダランとおろしてもらう
前腕を心臓よりも下に下げると、腕に血流が集まりやすくなりますよね。
時間としては3秒ほどでOK。
駆血帯を巻いて、ただ腕をおろしてもらうだけで血管の怒張を促します。
ベッドで採血をする
座位で血管を探して見つからない場合は、臥床になって血管を探してみましょう。
座位と臥床時では、皮下脂肪の位置が代わり、見えなかった血管が出てくることも。
また、血管がわかりにくいと、血管探すのだけでも時間がかかり、探す方はものすごーく必死になってしまいます。
患者さんが気分が悪くなっているコトを見落としがちになるので、予防として最初から臥床で探すのもアリです!
採血中に患者さんが気分が悪くなったときに、スピーディーに対応する方法はチェックしておこう。⇒【迷走神経反射になったときの対処法】
中堅&ベテランナースで今もなお続けている人も。指導者から教えてもらったから…とマネするとNGです。
必ずチェックしましょう。
【NGな方法】それやっても血管は怒張はしません!
ここからは、ちょっと前まで普通にしていた探し方。
その方法をやっても血管は怒張しないどころか、検査データに影響がでることもあります。
絶対にやったらダメな探し方です。
必ずチェックしましょう。
- 強く握る
- グーパーグーパーする
- たたく
- 温める
強く握る&グーパーグーパー握る
患者さん自身よくやってしまうのがこの行為。
- 手のひらを強く握る⇒ハンドクリップ
- グーパーグーパーを繰り返す⇒クレンチング
この動作は、筋肉細胞からのKの流出を引き起こし、正しい結果がでません。
やむを得ずしてしまった場合は、生化学のスピッツを一番最後にすれば大丈夫です。
なぜなら、採血してから5ml以降はK値への影響が少ないと言われています。
採血するときのスピッツの順番、覚えてる?
たたく
ベテラン看護師さんが、よくやる手法。
ペシペシ…と皮膚に刺激を与えれば痛みが生じます。その刺激は、血管を怒張するどころか、収縮させるだけです。
また、叩くことで赤血球が壊れる溶血を起こす可能性も。
叩くのはやめましょう。
温める
血管が見えづらいときに効果的と言われていた方法です。
実は…私も先輩ナースに教えてもらって何度かやったことがあります。
たしかに温かいタオルを乗せると、血管は拡張しますが、血流が増える訳ではありません。
これはあくまでも血管の「拡張」であって、「怒張」するわけではなし!
握った手はどのタイミングで開く?
太くて弾力ある血管を見つけるために親指を中に握ってもらった手。どのタイミングで開くのが正解でしょうか?
- 逆血が確認できたら
- 採血が終了したとき
- 駆血帯を外してから
答えは…
採血が終わってからの2番です。
よくあるのが採血の針を刺した直後。
患者さんから「もう手は開いていいですか?」と聞かれますが、「まだ握ってて下さい。開くタイミングは後で声掛けますね。」と返答して下さい。
なぜなら、採血途中で急に手を開くと、血管の圧が弱くなります。
圧が弱いと、スピッツに血管が入って来なくなり、採血に時間がかかる原因に。
また、手を開いたことで血管が動くこともあります。
「手を開くタイミングは後ほどお声掛けするので、軽くでいいので握ったままお待ち下さいね。」と声掛けすればOKです。
【おさらい】親指を入れてグーしてもらったほうが血管が見つけやすい!
では最後に、もう一度おさらい。
採血をするときに、親指を中に入れて握ってもらうのは、血管を探しやすくするためです。
その根拠は…
前腕部の筋肉を収縮
⬇
末梢血の還流を促進
⬇
末梢の静脈が怒張する
親指を入れる、入れないで差があるので、必ず親指を入れて握ってもらうようにしましょう。
ただし、このときに
- 強く握る
- グーパーグーパーして貰う
は絶対にやったらダメです。
採血データのK値に影響があります。
軽くでいいので、親指を中に入れて握ってもらうように声をかけて下さいね。