皮下注射って…皮膚をつまむよね。
あれ…?
薬液を入れるときは手は離すんだっけ…?
皮下注の実施の機会が少ない病棟なんかだと、採血や点滴は得意でも皮下注は苦手という先輩看護師も多いよね。
言い訳になっちゃうんですが、筋肉注射と混乱してしまって…。
皮下注射のやり方で困ったら…「皮下注射の目的」を思い出してみて!
実施回数が少なくても、皮下注のやり方で困ることはなくなるよ。
そこでこの記事では、「皮下注のやり方」のコツについて詳しく解説していきます。
自信を持って皮下注できる看護師になりたい方は、ぜひ最後まで読んでくさいね。
※皮下注と同様、筋注でも皮膚をつまむと思っている方はこちらをチェックしておきましょう。
皮下注射で皮膚をつまむ理由
皮下注で皮膚をつまむ理由は、ズバリ…
皮下組織(脂肪組織や結合組織など)に薬液を注入するためです。
(解剖生理学を思い出せばいいのか…)
ねぇ、杏ちゃん。
確実に皮下注射するには、皮膚をつまむとき何をチェックしたらいいと思う?
(えぇーーーー!適当にムギュってつまんでたけど、何か注意することでもあるの?)
すみません…分かりません。
わからないのも仕方ないのかも…。
看護技術本には「つまむ」としか書かれていないから、「つまむ理由」を知らないまま皮下注している看護師さんは多いもの。
ただドクターの指示で皮下注をしているワケではないから、なんでつまむ必要があるのか考えてみよう。
皮膚をつまむ理由って、皮下組織に薬液を注入するためだったよね。
ということは、皮膚をつままないと薬液が入らないとか…?
確実に皮下に薬剤を注入するためには,少なくとも5mm以上の皮下脂肪厚が必要なんです!
皮膚をつまんだときに、皮下脂肪厚をチェック!
皮膚をつまみあげた指と指の幅が1cm以上ある場所を選んで注射すればOKです。
では、もしも皮膚をつまんだ時、皮下脂肪厚が薄かったら(5mm以下)どんなことが起きるのか見ていきましょう!
もし皮膚をつままずに注射したら…【5㎜以下で皮下注した場合】
ここからはちょっと怖い話をします。
正確に皮下注射できなかった場合、
5mm以下の皮下脂肪厚で皮下注射すると、筋肉の表面に走行している血管や神経に注射針が刺さることがあります。
もし「血管」に皮下注してしまったら…
もし血管に注射針が刺り薬液を注入してしまったら、静脈注射と同様の効果です。
皮下注はリンパ管や末梢血管からゆっくり吸収されるので効果発現は約30分ほど。
一方、静脈注射の場合は、直接血管に入るので約10分で効果発現します。
皮下注射は、比較的ゆっくり吸収されることを期待しています。
つまり、
予定よりも早く吸収されたら…思いもしない副作用が出てしまうこともあるのです。
取り返しのつかない状況を起こさないためにも、確実に皮下注しましょう。
もし「神経」に注射針が刺さったら…
もし針先が神経に刺さった場合、患者さんはビリビリ…としびれる痛みを訴えます。
前に亜子先輩が教えてくれた「採血によるしびれ対応」と同じように、すぐに抜針すればいいのでは?
病棟には意識レベルが低い人や、マヒや知覚鈍麻がある人もいるよね。
そんな患者さんの場合、訴えが遅くなって末梢神経障害を起こす危険があります。
リハビリや疼痛コントロールは時間がかかるので、患者さんのADLやQOLに大きな影響を与えることになるでしょう。
最悪なケースでは訴訟問題にも…。
皮下注射の合併症を予防するためにも、注射部位をつまむことは大切!
もう迷わない!皮下注射の基本やり方【7ステップ】
皮膚をつまむ理由もわかったところで、改めて皮下注射の手技の確認をしておきましょう。
準備するもの
皮下注射するとき、以下のものを準備してください。
【皮下注の物品一覧】
- 注射の指示書
- 手袋
- 消毒綿
- シリンジ
- 針(23〜27G※)
- 薬剤
- 針捨て容器
- トレイ
皮下注する場合、主に使用する針は26G(茶色)です。
なるべく皮下注の痛みを軽減するために、ツベルクリン用のシリンジ注射針(1ml)を使うことが多いですよ!
事前準備すること
物品が準備できたら、患者名と薬剤名、薬剤量、日時、予約方法をカルテと処方箋で確認します。
加薬する前に、必ずWチェック!
指差しと声出し確認をしましょう。
その後、手指消毒して手袋を装着して薬剤を吸います。
エア抜きして針先まで薬液を満たした状態で準備はOK。
※シリンジに患者名、日付、薬剤名を記載しておく。
皮下注射のやり方
皮下注の手順は次の【7ステップ】で進めていきます。
【皮下注の手順】
- 適切な体位をとってもらう
- 穿刺部位を決める
- 消毒する
- 穿刺する
- 逆血がないか確認する
- 薬液を注入する
- 抜針し、止血する
それぞれの注意点やコツについて、詳しく解説していくね!
①適切な体位をとってもらう
注射をしやすいように、注射部位を露出し、腰に軽く手を当ててもらいましょう。
②穿刺部位を決める
皮下注の穿刺部位は、肩峰から肘頭のライン下1/3の位置なんですが、神経の走行を思い出して穿刺部位を決めましょう。
上腕に走行している神経は、「腋窩神経」と「橈骨神経」です。
とくに橈骨神経に注意して、穿刺部位を決めてくださいね。
③消毒する
「アルコールのかぶれませんか?」と確認してから、消毒します。
④⑤穿刺して、逆血がないか確認する
注射器の中に空気が残っていないかチェックしてから穿刺しましょう!
消毒部分に触れないように皮膚をつまみ、穿刺します。
刺入角度は10〜30°、針先の切り口を上にして2/3ほど針を進めましょう。
このときに、逆血やしびれ症状がないか確認することを忘れずに。
⑥薬液を注入する
薬液はゆっくり入れることで痛みを軽減できます。
薬液を注入するときは、皮膚をつまんでいた手は離してOK。
右手は患者さんの腕にしっかりあてて、シリンジを安定させるのがポイントです。
⑦抜針して止血する
抜針したあとは止血します。
皮下注射はゆっくり吸収することを期待しているので、揉まなくて◎
皮下注射のやり方動画はこちら↓
ちなみに…インスリン注射も皮下注射です。
腹部での皮下注のやり方(インスリン注射)
新人看護師さんが知っておきたい【インスリン穿刺の3つのコツ】
①皮膚をつまんで90度の角度で刺す
②注入ボタンが「0」になるまで押しきり、押したまま6秒カウントする
※針がすっごく細いから、全量入るのに時間がかかる。
③抜針する時は、ボタンを押したままに(カートリッジ内の血液逆流の予防) pic.twitter.com/9Lfg98Hwnf— みも💉看護師ブロガー (@nurse_mimo) August 26, 2020
インスリン注射の穿刺部位は、腹壁、大腿、臀部、上腕が候補になります。
ほとんどの場合、腹壁が選択されるのですが、理由は吸収スピード。
腹壁>上腕>臀部>上腕の順に吸収が早くなります。
穿刺部位は毎回2〜3mmずつずらして打つのがポイントです。
インスリン注射するときも、皮膚をつまむんですよね?
腹部でインスリン注射する場合、4mm針であればつままなくてもOKです。
上で紹介したつぶやきでは「6秒カウント」と書いてあったけど、注入後のカウントは早くなりがちだから、「10秒カウント」するのがおすすめ。
皮下注射とよく混乱するのが【筋肉注射】です。
筋注って皮膚つまむんだっけ〜?と思った方は【筋肉注射の手技】も合わせてチェックしておこう!
【皮下注射のよくある質問】皮膚をつまんだまま薬液をいれるの?
ここからはよくある皮下注の疑問にお答えしてこうと思います。
皮膚をつまんだ手。
薬液を入れるときもつまんだままなのか、それとも離していいのか悩む方は多いです。
結論から言うと、皮下注は皮膚をつまんだまま注入しません。
なぜなら、つまんだまま薬液を注入すると、投与した薬液が抜針したときに出てくることがあるからです。
皮下組織は皮下脂肪と結合組織でできているんですが、あまりスペースがありません。
もともと余裕がないのに、約1ccの薬液を入れたらどうなる?
指示された量を皮下注するためにも、薬液を投与する前に皮膚をつまんだ手を離してシリンジを固定。
しびれの有無や逆血がないか確認後、しっかり固定して注入しましょう。
最後に
久しぶりの皮下注射でも目的が分かっていれば、もう「つまむんだっけ?」と悩むことはないはず!
この記事は「看護がみえる②」を参考に書いています。
採血や注射、輸液、吸引、排泄ケアなど、看護師1年目でマスターしたい看護技術に特化した本です。
イラスト&写真付きでわかり易く、しっかり予習&復習したい方におすすめ!
皮下注射については44〜48ページに掲載。