筋肉注射って、皮膚はつまむんだっけ?それとも伸展するんだった?
同僚は「つまむ」って言っているけど、つまむ理由ってなんだろう…
こんな悩みを抱えていませんか?
どうも、現役ナースのみもです。
病棟で働いていると、筋肉注射する機会は少なく、実は…先輩ナースでも皮膚はつまむ?or伸展?と悩む人も少なくありません。
だから、「これって皮下注射じゃないの?」と手技が曖昧な人もチラホラ。(⇒参考:皮下注射のやり方)
というのも、筋肉注射の部位は、腕だけでなく、おしりも一般的です。実施回数が少ないと混乱してしまいますよね。
そこでこの記事では、筋肉注射の手技について根拠を元に以下の順でわかり易く解説していこうと思います。
1ヶ月ぶりの筋注指示が出ても、もう悩むことはなし!
こっそり同期に聞いたり、慌ててネットでググることもしなくて大丈夫です。
おまけに、筋注のコツ(痛くならない方法など)もピックアップしているので、「この看護師さん、注射上手!」と褒められるはず。
筋肉注射に自信がない人は必ず読んで下さいね。
※三角筋への新しい筋注のやり方はこちら
筋肉注射で「つまむ」or「伸展」で迷ったら、目的を思い出そう!

皮膚ってつまむんだっけ?それとも伸展だっけ…?
ズバリ結論を言うと…筋肉注射は、皮膚をつまんで打ちません。
もちろん腕だけでなく、おしりでも!
なぜなら、針が届かなくなるからです。
※ちなみに筋注で使用する針のゲージは22〜25G。
ほとんどの人が23Gで注射しているのですが、なぜ一番細い25Gではなく23Gを使うのでしょうか?
先輩に言われたからではありません。
ちゃんと根拠があります!
実は…針のゲージによって長さが違うことが原因なんですが、どれくらい違うのかは【痛くない方法】で写真付きで紹介。

と思った人、注射部位によって針を使い分けができる看護師になりたいならチェックしておこう!⇒【筋注で痛みを軽減させる方法】
話を元に戻しますね。
なぜ筋注でつまむのか…と悩む人が多いのでしょうか?
それは、皮下注射と混同してしまっているせい。
だから、ごっちゃになっている人も少なくありません。
「どっちだっけ?」と迷ったら、筋肉注射の目的を思い出しましょう。
そうすれば…ハッキリつまんだらダメなことが分かります。
筋肉注射は、筋層に入れるのが目的!【だから、つまむのはNG】

何だっけ…?
筋肉注射の目的は、筋層に薬液を入れることです。
実は、ここが超重要なポイント!
看護師はドクターの指示のもと、注射をします。(⇒看護師の仕事内容はシンプルに2つ!)
ドクターの指示があるからと注射してはダメ!
なぜ主治医は、皮内・皮下・静注・筋注の4つの中で筋注を選んだのかを考えてみましょう。
- そこそこ素早く、長く作用してほしい
- 油性・懸濁性・刺激性の強い薬液
この理由で、「筋注」の指示を出しています。
そこそこ素早く、長く作用してほしい
注射方法によって「吸収速度」が違います。
筋肉注射は、静注よりも遅く、皮下注射の2倍のスピード。
油性・懸濁性・刺激性の強い薬液
静脈注射などで直接血管に入ると障害を起こすような薬液のとき筋注です。
ちなみに…コロナワクチンやHPVワクチンは懸濁性の薬液。
話は戻って、皮下注の投与量のMAXは2mlですが筋注は5mlなので、皮下注よりも多く投与したいときも適用となります。
「それって皮下注じゃない?」と曖昧な手技にならないためにも、次の項目は必ずチェックしよう!
確実に筋層に入れる!正しい筋肉注射のやり方【動画付き】

ここからは、筋肉注射のやり方です。
確実に筋層に入れるためには、正しい筋注のやり方をマスターしましょう。
筋注のポイントは2つ!
- 注射角度
- 注射部位
筋注の角度は45〜90°【筋肉注射の角度の理由】
筋注の角度は、国試でも必ず出てくるポイント。先輩ナースにも必ず確認されます。
筋肉注射の針の角度は45〜90°です。
こんなにも範囲が広いのは、筋注する部位によって角度が違うから。
筋注の一般的な部位は、「上腕部の三角筋」と「臀部の中殿部」
筋注で一般的な部位は、
- 上腕部の三角筋
- 臀部の中殿部
この2箇所です。

注射部位は、肩峰から三横指下の三角筋中央部に打ちます。
ただし、腰に手を当ててもらう場合は、やや前方に穿刺しましょう。
というのも…
三角筋後部には、深部に腋窩神経や橈骨神経が走行しています。
腰に手を当てると三角筋の中央部がやや前方にくるので、神経を避けて安全に筋注するならやや前方で打つのが◎。
※手をおろしたときと、腰に手を当てたときの三角筋の中央部の違いは自分の目で確かめてくださいね。
従来のやり方(肩峰三横指)よりも合併症のリスクが少ない「新しいやり方」もチェックしておこう↓


お尻の片側を4等分。
縦横線の交点から斜め外側上方に引いた二等分線上の腸骨稜から1/3の部位で注射します。
筋肉注射の目標点は、皮下組織よりも深部にある『筋肉層』です。(下イラスト参照)

自分の「腕」と「おしり」をつまんでみて下さい。
皮下組織の厚さは、腕<お尻だったはず。
中殿筋部で筋注する場合、つまんでしまうと筋層まで針が届かないので、90°でグサッと刺しましょう。
もし筋層に届かずに皮下組織に注射してしまったら…潰瘍や組織障害が起こるので、しっかり伸展させて筋注するのがポイントです。
筋肉注射のやり方(筋肉注射手技)動画
筋肉注射の手順は、5ステップです↓
- 注射部位をチェック(部位、皮下脂肪&筋肉の確認)
- アルコール消毒する
- 皮膚を伸展させて注射針を45〜90℃の角度で針の2/3ほど刺入(約2cm)
- しっかり固定してからゆっくり薬液を入れる
- 抜針して、軽く揉む(もしくは揉まない)
理由は、もう分かりますよね。
確実に筋肉層に薬液を入れるため!
しかし、三角筋で注射する場合、伸展させる必要はなし。
一連の流れは動画でチェックしましょう↓
薬液を入れる前にしびれ感、疼痛、違和感、逆血がないか必ずチェックしよう!
もし逆血があった場合は、筋肉層には届いていません。
疼痛やしびれ感がある場合は、神経に触れている可能性があるので【神経損傷によるしびれの対処法】を参考に速やかに対処してください。
筋肉注射のコツ&注意点

こんな風に思っている人も多いことでしょう。
しつこいですが、筋肉注射の目的は、筋層に薬液を入れること。
注射する前に、「皮下組織」と「筋肉層」の厚みをチェックしてください。
というのも、太っている、痩せているなど体型で「皮下脂肪」の厚みが異なります。
また、高齢者は、「皮下脂肪」だけでなく「筋肉層」も薄くなりがち。
確実に筋肉層に薬液を入れるために、必ず厚みをチェックしてから注射部位を考えましょう。
上腕部の三角筋で筋注する場合、体型によって角度を変えるのがオススメです。
90°でグサリと刺す光景が「筋肉注射は痛い…」とイメージさせてしまっている要因の一つ。
確実に筋層に入れば、90°で刺す必要はありません。(※中殿部は90°ですが…)
不必要に怖がらせないためにも…
・標準体型の人⇒60℃
・太っている人の場合⇒90℃
を目安に注射すれば、確実に筋肉層に入ります。
ただし、高齢者は臀部で注射したほうが◎。
というのも、腕の筋肉層はペッラペラな人が多く、筋肉注射には向きません。しっかりと筋肉層がある臀部で実施しましょう。
注射後は、軽く揉む!
筋肉が薬剤に過剰な反応を起こして痛くなったり、筋拘縮を起こさない、薬剤の吸収を高めるために、注射の後は揉みます。
しかし、一昔前のように、しっかり揉む必要はなし。
軽く揉む程度でOKです。
反対に揉んだらダメな薬剤もあります。
一例になりますが…
- アタラックス⇒組織障害を起こす恐れあり
- サンドスタチン⇒吸収を早めたくない
- リスパダールコンスタ⇒臀部筋肉内のみため
- コロナワクチン⇒懸濁液の中の粒子が壊れる
筋注のあとは、軽く揉むでOKです。
筋注が禁忌な人
ドクターも人間。どんなに気をつけていてもミスします。
ドクターの「筋注指示」があるからといって、禁忌な人に注射しないように必ず覚えておきましょう。
【まとめ】ベテランでも穿刺が浅くなりやすいので要注意!

この記事を書こうと思ったきっかけは、実は「あれ…?筋注ってどうするんだっけ?」と手技に不安を抱えていたからです。
あなたと一緒。
もしかしたら私のほうが酷かったかもしれません。笑
看護技術はやらないと忘れていくので、オーダーが出たら積極的にやった方がいいのは分かるけど、手技に自信が持てなくて避けていたんです。
ただクリニックへ転職して骨粗鬆症やブスコパンの筋注がやたらと多かったので、逃げられる状況でなくなったので筋注と向き合うことに…。
そのおかげもあり、今では筋注の手技には自信が持てるようになりました。
では最後に筋注のおさらいをしていきますね。
筋肉注射は、皮下注射の2倍近いスピードで血中濃度がピークに達します。
また、静脈に入れると静脈炎を起こすような刺激の強い薬剤や油性液、混濁液も使用可能です。
そんな刺激ある薬液を注射する場合、筋肉組織はOKでも脂肪組織ではダメージを受けてしまうものも…。
確実に筋肉層に針を刺すことが、筋肉注射をする看護師に求められています。
グサリと刺すと分かっていても、少し躊躇してしまうもの。新人をはじめ多くの看護師が、浅い穿刺になっています。
皮膚をつまんでしまうと筋肉層には針が届かなくなるので、筋肉注射では皮膚はつまみません。
注射のオーダーが出たら解剖生理学を思い出すとイメージしやすいですよ。
筋肉注射するとき、患者さんに「痛くしないで!」と言わたことありませんか?
筋肉注射は痛いもん…と思っている人は、【筋肉注射が痛くない5つの方法】をチェックしよう。

この記事は「看護がみえる②」を参考に書いています。
採血や注射、輸液、吸引、排泄ケアなど、看護師1年目でマスターしたい看護技術に特化した本です。
イラスト&写真付きでわかり易く、しっかり予習&復習したい方におすすめ!
筋肉注射については49〜56ページに掲載。